中西 進先生の「日本人とは何か」著書、はじめに の写し書き

少し前の話だが、ひとりの外国人から相談をうけた。日本の大学に留学して、日本を研究したいが、どこの大学を志願すればよいか、と。*「行変えの印 」そのとき私は、はたと困った。日本文学を勉強したいなら日本文学科に、日本歴史をやりたいなら日本史学科に行けばよい。しかし、日本そのものを勉強したいとなれば、いったいどこの大学に入学すればよいのか。大学は六百ちかくもあるのに、日本学科など、どこにもなかったのである。*これほどに日本人は日本のことに無関心なのだ。いや価値をおいていないのかもしれない。欧米に追いつけ、追いこせでやってきた近代日本は、これで仕方なかったのかもしれないし、欧米化することが近代化だったアジアにあっては「脱亞入欧」はあたり前のことだったろう。*しかし、その憧れの欧米がアジアを見直し始めている。つい最近も世界的な演出家のジョン・マイノイヤーがつくったバレエ「オデュッセイア」は能をヒントとしたと彼自身が語っている。中国の『老子』は欧米の隠れたベスト、ロングセラーだという。早い話、最初に紹介した外国人は、まさにそのひとりに他ならない。*日本人は、このへんで、もう欧米人のまねをするのをやめて、日本人らしく生きるべきではないか。(続きは明日書き写し予定)゜?